とんぼ玉作家 礒野昭子(いそのあきこ)のホームページ

わたしはかつて、蟲だった

わたしは見たままでありながら、見たままでないもの。
わたしは誰・・・わたしは何者?
わたしはいつまで蟲だったのか。
わたしはいつからキノコなのか。

虫草(ちゅうそう)と呼ばれるキノコたちがいます。
生きている虫にとりつき、体内に菌糸をのばしてその身体を食べ、のっとります。
時がくるとのっとられた虫からは何かが生えてきて、なんとも不思議な姿になります。
蟻をのっとるのはアリタケ。蜘蛛をのっとるのはクモタケ。蝉を乗っ取るのはセミタケ。それぞれに美しい姿をしています。
ここに居るのはウゴウゴタケ。
生きているウゴウゴとは全然別の存在。
蟲の姿をしていても、その半分朽ちた身体の中身はびっちりと菌糸でうめつくされ、本質はキノコそのものになっているのです。
そしてもちろん本当は、ガラスという石の塊。

(2021年 8月)